武蔵小山創業支援センタートップ

VOL.20

田園調布のおばあちゃんたちの想いを今の時代につなぎたい!
昭和20年~40年代の和ビンテージ洋服を販売・レンタル

ダブルエスワールド 大西澄江さん

 ・事業所名:ダブルエスワールド  店名:SU-MIX
 ・創立年月日:2015年7月17日
 ・URL:http://www.su-mix.com/
 ・事業内容:和ビンテージ商品の販売・レンタル
  東京都公安委員会古物商許可証 第302161606356号

就職活動している場合じゃない!転勤で思い出した自分の使命。

起業のきっかけは、主人の転勤と出産でした。
それまで化粧品メーカーで8年間、商品企画とプロモーションの仕事をしていたのですが、退職して宝塚へ。出産後1年間は子育てに明け暮れる毎日を送っていました。
しかし、根っからの仕事人間の私です。そのうち仕事をしないことがストレスになって、商品企画やECマーケティング、それもハードな仕事ばかりを探し始めました。前職の経験を活かせていいかなと思っての就活でしたが、最終面接になると必ずこう言われてあきらめることに。「小さな子どもがいたんじゃ難しいでしょ?」。

「あなたが集めた昭和ビンテージの洋服800着、どうするの?」という声が聞こえてきたのはそんなときです。夢なのか自分の心の叫びだったのか分かりませんが、ふと自分のやるべきことを思い出しました。「そうだ、私は多くの人の想いを背負っていたんだ。その想いを早く形にしなくちゃ!再就職なんてしている場合じゃない」

当時の私には、寝食を忘れて仕事に没頭したいという気持ちと、できるだけ娘のそばにいてあげたい、という相反する気持がありました。起業はその両方を実現できる道のひとつです。
さっそく開業届を出して、昭和ビンテージの洋服を販売する事業を立ち上げることにしました。


古着屋経営の失敗とそこで得たもの

10年以上も前になりますが、下北沢で古着屋を経営していたことがあります。小さなころから洋服が大好きで、「洋品店を開きたい」という学生時代からの夢を形にしたお店でした。オール500円でお手頃価格がウリでしたが、高いテナント料、しかも古着激戦区での運営は苦戦を強いられ、開業後わずか2年で閉店してしまいました。

しかし当時、今の事業をはじめるきっかけとなった洋服との出会いがありました。
友人が、田園調布に住む自分のおばあちゃんを紹介してくれたのです。「なかなか処分できない古い洋服があるんだけど、何とかならないかしら」というご相談でした。
何の気なしに古着を買い取りに行った私でしたが、出された洋服を見て驚くばかり。それは、昭和20年代から40年代に作られた上質なオーダーメイド品や、高価な既製品の数々だったのです。

「どれも手放せなくて大切にしてきたけど、あなたにだったら託せるわ」
おばあちゃんが、それぞれの洋服にまつわる懐かしい思い出話とともに私に託してくれたもの。
「この洋服たちは決して安売りしない。無駄にしない!」と心に決め、「いつか昭和レトロの洋服を集めた博物館を開こう」という新たな夢が芽生えました。「販売できるものは売るが、販売できないものはNGOを通して発展途上国に寄付する。決してゴミにしない」という今の事業の基となるコンセプトが出来上がったのもこのときです。

古着屋なのに「売らない古着を集める」のもおかしな話でしたが、この日を境に、田園調布のおばあちゃんたちからどんどん古着が集まってきました。その数なんと800着! 私のコンセプトは、あっという間に120名以上のおばあちゃんに広まりました。
「捨てられないし、誰にもあげられないの。有効に使ってもらえるのならあなたに託したいわ」
「お金じゃないのよ。あなたに託すことが私の喜びなのよ」
このとき受け取ったおばあちゃんたちの想いが、宝塚で起業しようと思ったときによみがえってきたのです。

「あなたが集めた800着はどうするの?」という声は、転勤で東京から持ってきた洋服たちが発していた声だったのかもしれません。「あの洋服たちを世に出してあげなければ!」という使命感に駆り立てられるように、私は「昭和レトロの洋服販売サイト」を立ち上げることにしました。

しかし、開業届を出してみたものの、自分の事業プランを多くの人に知ってもらわないことには、なかなか前に進めません。どうしていいのかアドバイスをもらいに商工会議所で相談したところ、「丁度こういうのがあるから応募してみたら?」とビジネスプランコンテストへの応募を勧めてもらいました。
結果、2015年度の優勝賞をいただき、そのときに専門家のアドバイスを受けて作ったビジネスモデルが今のお店、SU-MIXの軸になっています。

和ビンテージを通して、優れた日本の技術・文化を伝えたい

SU-MIXで扱う商品は、昭和20年~40年代のものばかりです。
高級という一言では表せない、素材とディティールにとことんこだわった上質な商品。洋服だけど「和」のテイストと、確かな縫製技術を活かした日本にしかない洋服。私はこれを「和ビンテージ」と名づけました。

それぞれの洋服には、若かりし頃のおばあちゃんたちのストーリーと想いがあります。
「こういったお洋服を持っていれば、銀座を歩いても恥ずかしくないわよ」と、母が仕立ててくれたスーツ。「結婚する前に何着が持っていないと、相手の方に恥ずかしいわ」と、買ってもらったワンピースやブラウス。「お嫁に行くとき最低5着、10着は必要よね」と仕立ててもらった洋服の数々。
どの商品にも自分に託されたときの想いが詰まっています。だからこそ、昭和の洋服にこだわりのある人、昭和レトロが好きな人に買ってもらいたいと思うのです。

東京に戻り、「この和ビンテージの洋服をもっと多くの人に知ってもらいたいと」考えていたとき、武蔵小山創業支援センターの存在を知りました。そして、ネット販売だけでは行き詰っていた私に、大きなチャンスが巡ってきました。


 

テストマーケティングへの誘いで、洋品店経営の夢がよみがえった

初めてセンターを訪れたとき、実は心がボロボロな状態でした。
それまで相談していた専門家の先生たちに、「賞を取ったかもしれないけど、それビジネスとして成立するの?」「あなたのやっていることは中途半端。何をやっているのか分からない」と突っ込まれ、「おばあちゃんたちから奪い取ってんじゃないの」とまで言われ、起業した意味なんてなかったのかも……と自信喪失になっていたのです。
そんなとき、「それいいですね!面白いじゃないですか」と前向きなコメントをくださったのが、このセンターです。「あぁ…私、この仕事やっててよかったんだ」と救われた思いでした。
その後、運よくテストマーケティングのお話をいただき、6月にお店をオープン。今に至っています。

テストマーケティングのメリットは、なんといってもお客様と直接触れ合う場ができたことにあります。
リアルに商品を手に取っていただける。試着して着心地をたしかめてもらえる。ネット販売では伝えづらい質感や商品のこだわりを直接伝えられる喜びは、これまで味わえなかったものです。

それに、来店された年配のお客様が、「よく集めたわね~!」「懐かしい、いいものを見せてもらったわ」と感動してくださること。「昭和でこの年代のものだけを置いているお店は他にないのよ」と、マニアの方にまとめて購入していただけることも、実店舗ならではの効果です。
「私も洋服をあなたに託したいわ。住所を置いていくから、引き取りにいいタイミングがきたら連絡してね」と、仕入れの提供者ができることも分かりました。

またネットとの相乗効果で思わぬ展開もありました。「昭和レトロのビンテージを探しているんだけど」と、キーワード検索で来店されたスタイリストさんがいて、その商品をNHKの連続テレビ小説「ひよっこ」に衣装協力することになったのです。

このお店は8月末まですが、それまでの間に「和ビンテージの洋服を取り入れた撮影会」を開催したいです。銀座のメインストリートを昭和レトロの貴婦人たちが歩くイベント撮影会。昭和の良き時代に銀座で売られていた洋服、「これを着て銀座を歩きなさい」と、お母さんが仕立ててくれた洋服たちが、70年以上の時を経て銀座に戻ってくるイベントです。
「おばあちゃんたちの想いを乗せた洋服が、再び銀座の街を歩く姿を見せてあげたい」「若い人たちにも昭和のモノづくり技術の素晴らしさを知ってもらいたい」イベントを通じて、そんな想いが伝わればと考えています。

 
 

店舗オープンを考えている方へ

テストマーケティングをやってみて、実店舗オープンに向けて大きな自信がつきました。
「もっと早くこのお店を知りたかった」「昭和レトロといえばSU-MIXだよね」と言ってくださるお客様に出会えたからです。

ここのメリットは、バス通りで人通りも多いこと。バスや車の中から見て、気になって寄ってくれる人がいて、「いつも面白いものを扱っている」イベントスペースとしても認知されています。毎日お店にいて、お客様が「ニッチなもの、エッジが効いたもの」をそろえたお店を期待しているのを感じます。

また、センターからのきめ細やかなアドバイスも心強いです。出店準備から販促物の制作、広報、出店後のアドバイスと、毎日が学びの連続で、ありがたい経験ばかり。チラシ、DM、店頭幕、ショッピングバッグの制作、フィッティングルーム、ハンガーのレンタル代など、費用を負担してくれることも大きな励みになっています。

これまで「お店を持つ」という選択肢は、自分の中にありませんでしたし、「レンタル」の発想もありませんでした。それが今回の経験を通じて現実になり、多くの人脈形成にもつながりました。
自分一人でできることには限りがあります。迷ったりつまずいたりしたら、ぜひセンターに相談してみてください。私に新たな道が開けたように、あなたにもきっと飛躍のチャンスが訪れます。

 
 

インタビューを終えて

大西さんは「行動力の塊」といった印象の方でした。記事には書ききれませんでしたが、宝塚でのビジネスプランコンテスト受賞後、別のコンテストにも応募してセミファイナリストへ。NYの展示会に和ビンテージもので参加など、起業を思い立ってから2年あまりの間に、多くのチャンスをものにしていらっしゃいます。
お店で商品にまつわるお話をうかがいながら、ハンガーに掛けられた昭和レトロの洋服たちが、「私たちをもう一度外に出してくれてありがとう」と言っているようでジーンときました。
お店のオープンは2017年8月27日まで。懐かしい洋服はもちろん、日本が誇る縫製技術の職人技をぜひ手にとって見てください。昭和レトロな空間にタイムスリップできますよ。

(インタビュアー 物語ライティング)

 

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