VOL.26

 まず調べる!まずやる!まず動く!をモットーに!

 一般社団法人金属アレルギー協会 鈴木久子さん

 ・事業所名:一般社団法人金属アレルギー協会
 ・創立年月:2017年4月
 ・URL:https://www.metallicallergy.or.jp/
 ・事業内容:金属アレルギーの認知度向上を目指した啓蒙活動、各種検定やマークの普及、イベント企画・運営など

夫のひと言が起業スタートのきっかけに

 会社員時代はSEをしており、出産直前に退職、その後は主婦として子育てに専念してきました。それから子供も幼稚園に入り少し時間もできたので、働いてみようかなという気持ちが湧いてきました。しかし、SEという仕事は間が空いてしまうと復帰が難しく、業種的にもコンピューターの復旧といったインフラ寄りの仕事で、残業あたり前、夜中の仕事あたり前、お正月出勤あたり前ということもあり、子供がいる身ではSEには戻れないと思っていました。現在は女性活躍推進もあって、輝く女性、キラキラ女子といったキャリアウーマン志向も普通になってきましたが、私の頃は、採用面接で「子供が病気になったらどうするのか?」という質問が来る時代でした。これから新しいスキル習得の勉強というのも気が引け、普通にパートタイムというのも…、と思っている間に時間は経っていきました。
 そんなある日、大事にしていたプラチナのピアスをなくしました。そのピアスは独身時代から金属アレルギーのために使っていたもので、ネットで同じようなピアスを探したのですが高くて手がでませんでした。ところが海外のサイトを調べると、金属アレルギー用のステンレス製アクセサリーが販売されていました。「ステンレス製って何だろう?」と思いつつ調べていくと、小売はなく卸売のみだったので買うことができませんでした。それを夫に相談すると「買えないのだったら、自分で売れば?」と言われました。おそらく夫は、「自分でネットショップをやってみたら」ぐらいの軽い気持ちで言ったと思いますが、このひと言から私の起業人生スタートのきっかけになりました。
 

短期間でファイナリストに進出

 最初は起業というより、ネットショップを開設することを目的にして、インターネットで情報収集をしていました。その時に「女性のための起業スクールMU★SAKO」がひっかかりました。武蔵小山創業支援センターは自宅からも近く、受講料もリーズナブル。しかも丁度良いタイミングだったこともあり「きっとこれも何かのご縁だ!金属アレルギー対応をやろう!」と具体的に起業に向けて動きだしました。当初のビジネスプランは、レンタルサーバーを借りて本格的なネットショップを開設するプランでしたが、ウーマンズビジネスグランプリに参戦することになり、ネットショップだけでは止まらず商品開発もするプランになりました。そのおかげで起業を志してから短期間にもかかわらず、ウーマンズビジネスグランプリのファイナリストまで進出できました。


悔しさから始まった協会設立

 ウーマンズビジネスグランプリではファイナリストまで進出できたものの、残念ながら賞を取るまでには至りませんでした。時間的なことを考えれば、この結果もしょうがないのですが、私のビジネスプランは「こうなったらいいな」という夢しか書いてなく、何も形にはなっていません。それが悔しくて、大田区のビジネスプランコンテストに再挑戦してグランプリを取ることができましたが、そこから私の「勘違い」が始まりました。
 私のプランを評価してくれた信用金庫の担当者が私の前に列を作って、融資の話をしてくれました。その後、株式会社を設立し、多額の借入金をし、商品開発に着手したものの、結果は大失敗!もともと細々とネットショップを運営することをイメージしていた夫も怒り心頭。グランプリを受賞したことで「私ってすごい!」と天狗になっていましたね。現実を知る、良い勉強になったと思います(笑)。
 そんな時、金属アレルギー関係でつながりのあった一般社団法人日本環境保健機構の方から、「鈴木さん何がしたいの?」と問われました。原点に立ち返って考えて、「金属アレルギーで困る人をなくしたい」ということがゴールであることに気づきました。そして日本環境保健機構の方から「だったら、ものを売るのではなく、協会を設立してビジネスをやろうよ」と言われ、2017年4月に今の金属アレルギー協会を設立に至りました。


人的ネットワークを活かしてビジネスを成長

 協会設立当初は、日本環境保健機構と大手資格受験校とパートナーシップを組み、資格ビジネスを開始しました。販売促進面では、「みんなのアレルギーエキスポ」のブースを使わせてもらうこともできました。その後、企業研修に進出してその時には、電話営業を頑張りました。最初の頃は電話営業が怖くてできなかったのですが、テレアポが得意な中小企業診断士との出会いがあり、それからは普通にできるようになりました。
 また人的ネットワークを増やすために経営者会に積極的に参加しました。最初は、必死に金属アレルギーの話をしていましたが、誰も興味を持ってくれませんでした。しかし回を重ねるうちに、趣味の話、ゴルフ好き、マンガ好き、ビジネスの失敗談などを話せるようになって徐々に人的ネットワークも増えていきました。今では協会主催イベントの協賛企業も経営者会から募れるようになったり、本業以外の仕事も舞い込んでくるようになったりしました。また経営者会では、私より遥かに事業経験豊富な経営者と出会うことができ、自分自身の経営者としての成長にもつながったと思います。


まず調べる!まずやる!まず動く!

 私のモットーは「まず調べる!まずやる!まず動く!」です。2020年は新型コロナ感染症が拡大したことにより、装飾品業界もその影響を受けました。当協会としても新型コロナの影響を受ており、ゆえに新たな展開を模索すべく自ら勉強をしました。またZOOMを使ったオンラインサロンや勉強会、さらにはYouTubeへの動画投稿も企画、撮影、編集も自力で始めました。新しいことに挑戦しようとすると失敗を恐れて躊躇してしまう人もいますが、ダメだったらその時に考えればよいと思ってます。人から聞いた話だけを鵜呑みにせず、自ら調べて納得できたものだけを実行するようにしています。 
 起業は苦しかったけど満足しています。商品開発の失敗はありましたけど、その経験により、ものづくりのコンサルティングもできるようになりました。これも、「まず調べる!まずやる!まず動く!」の結果のひとつと考えています。
 起業して良かったことはたくさんありますが、私が提供した金属アレルギーの情報やコンサルティングで、会員様の売上があがったことが一番うれしかったです。この会員様のために、協会をどう残していくかという未来を考えています


インタビューを終えて

 起業に必要な要素のひとつとして、「不屈のポジティブマインド」ということを実感させられました。創業者にとって、成功している経営者の成功している一面だけを見ることがほとんどですが、そこに行きつくまでは、事業に失敗して損害を被った、取引先が倒産して不良債権をつかまされた、信頼していた従業員やビジネスパートナーに裏切られた、などなどの失敗経験を重ねているものです。逆を言うと、失敗経験のないビジネスはほとんどなく、多くの経営者はその失敗経験を糧に、次にどうするかを考えて行動し、成功を勝ち取っているのです。
 またほとんどの経営者は、その失敗経験を口には出さないものです。それにはプライドの高さや、信用面でマイナスになるのではないかという不安があるゆえ、経営者は外では鎧を纏っていることが多いです。ゆえに、自身の失敗経験をポジティブに話せると、経営者に共感が生まれ、人的ネットワークづくりにプラスに働くことがあるのです。
鈴木さんが比較的短期間で専業主婦から起業家として確立できた要因としては、不屈のポジティブマインドと人的ネットワーク構築が大きかったと思います。これから起業を目指す人たちは、この2点をしっかり学んでおくと良いでしょう。


(インタビュアー 西條)
 

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