VOL.29

 食のニーズを捉えた『うちchef』で起業!

 株式会社EATMOW 比家ゆかりさん

 ・事業所名:株式会社EATMOW
 ・創立年月:2018年4月
 ・URL:https://www.eatmow.com/   https://uchi-chef.com/
 ・事業内容:出張料理マッチングプラットフォームうちchefの運営・管理、
  企業に対するレシピ及び商品の開発支援、料理教室の開催等

会社人生10年目で起業の道を選択!

 大手食品メーカーに在籍しながら、兼業として商品開発やケータリングなどの活動をフリーランスとして行っておりました。当時は、いつかは起業したいという思いはありましたが、実行に移すことはできませんでした。
 ところが入社10 年目のある日、会社から企業専属となるか否かの決断を迫られることになりました。会社でのお仕事は、常に守られた環境の中で安定して収入を得ることができ、その恵まれた環境の中で、自分の好きな商品開発の仕事もでき、やりがいもありました。一方で、生活自体に変化がなく、物足りなさを感じることがありました。それまで同時進行で続けてきたフリーランスの活動をストップしてでも会社に残りたいのかを自問自答した時に、独立したいという夢を実現するのは今しかないと思い立ち、自分が経験してきた食に関わる業務の延長線上の事業を前提に、起業の道を歩み始めることになりました。


MU★SAKOとの出会いが起業を加速

 起業するにあたって、事業計画が必要ということは感じていましたが、企業に在籍している時には、与えられた目の前の仕事をこなすという生活であったため、事業計画とは無縁の状態でした。また、人前で話したりすることも得意ではありませんでした。
 それでも自分のやりたいことを事業計画という形にしたいと思い、ある経営コンサルタントに相談したところ、「本気でないとついていけない位厳しいけど、本当にやる気があるならお勧めできる起業塾があるよ」と 武蔵小山創業支援センターの「女性のための起業スクールMU★SAKO」の事を教えてもらいました。そして、自分は何をしたいのかを考えた結果、思い切って大手食品メーカーを退職しMU★SAKOに参加しました。
 MU★SAKOで起業を目指す同期生は、ご家庭や仕事があり忙しい方達でしたが、皆さんが事業計画作成に真剣に取り組んでいました。志を持った同期生の励ましもあり、無事、卒業することが出来ました。振り返れば、今までの人生で一番集中して一つの課題に取り組んだ3か月だったと思います。卒業式では、皆それぞれこみあげる想いがありウルウルでした(笑)。
卒業後も、武蔵小山創業支援センターからはイベント出店やセミナーでの登壇など、いつも気にかけていただき、色々な形でのきっかけ・チャンスをいただきました。特にウーマンビジネスグランプリではファイナリストにまで選出していただき、それが起業を加速することになりました。


お客様とシェフの視点から生まれた『うちchef』

 企業を退職後、フードコーディネーターとして、⾧年大手食品メーカーの販促メニュー開発や、外食産業の商品開発に携わってきた中で「大量生産・大量消費ではなく、お客様個々のライフスタイルに寄り添った食のサービスを届けたい」という思いが生まれました。

 それと同時に、食の仕事を通じて出会った料理人たちが、低賃金や⾧時間労働による不安定な生活を余儀なくされている現実も目の当たりにしてきました。優れた技術力を持つ料理人が、やりがいと正当な報酬を得られるような仕組みを作り、働き方のサポートを行いたいという気持ちも、私の中に芽生えました。この2つの想いをカタチにしたのが、出張シェフマッチングサービス「うちchef」でした。
 「うちchef」は、インターネット上で一流シェフとお客様をマッチングし、一流シェフがお客様のご希望の場所へ伺い、その場で食材を調理し提供するシェフとお客さまのマッチングサービスです。
 「うちchef」スタート時は登録シェフも少なく、事業自体もいわゆる家事代行をイメージされ、割高な印象を持たれました。さらに私自身もITに疎く、身近にIT に精通している方がいなかったため、特にサイト構築にはとても苦労しました。
試行錯誤を繰り返す中、コンセプトはそのままにハレの日需要に対応する出張料理に主軸を変更。登録シェフも知り合いからの口コミもあって、徐々に広がっていき、今では70名もの一流シェフが在籍し、現在の形になりました。
 さらに最近になって、安心してお任せできるIT事業者様と巡り合うことができ、システムの再構築も進めています。

 

人生の節目となる場を任せてもらう瞬間

 「うちchef」の利用者は、家族に小さなお子様や高齢者がいて、外食へのハードルが高い方が多いです。利用者の中には、こんな方もいらっしゃいました。普段は高齢者施設に入居されている方が一時外出許可をもらい、家族会として弊社サービスをご利用いただいたのです。利用前は「これが最後の家族会になるかもしれない」とおっしゃっていましたが、サービスをご利用いただいた後には「次は 3 か月後にまた頼みたい」と弾む声でお電話をいただきました。
 他にもご両家のお顔合わせや家族の記念日、法要後のご会食、またご家族のご病気が進行し通常の食事がもう取れなくなってしまうかもしれない、美味しいものを美味しく味わえるうちにプロの本格料理を自宅で周りに気兼ねなく楽しみたい。その様なご利用もございます。皆様のそれぞれの人生の節目となる大切な場をお任せいただけることに、大きな責任とともに、このサービスを、必要としている多く人々にお届けしたいと日々思っています。
 美味しい料理の前では、だれもが笑顔になります。食を通して皆様を笑顔に導くお手伝いが出来る事に喜びを感じ、また、このサービスをやっていてよかったと思います。


食の総合プロデューサーを目指して

 新型コロナウイルスの感染・拡大により、事業者様も影響を受けていると思います。弊社の出張料理サービスも、新型コロナ以前の様に大勢がお集りになるような場面での注文は減りました。一方で良かったこともあり、シェフ登録希望者が殺到し、料理⾧やご自身で店舗を構える方たちの登録が増えました。世の中の状況が回復するまでには未だ時間がかかると思いますが、登録していただいた一流シェフのみなさまに、より多くの活動の場を提供していきたいという思いで事業を進めております。
 具体的には、「うちchef」での活動と併行して、当初よりビジョンとして描いていた、法人向けの食のサービスも行っていきたいと思います。第一弾として2019年12月から、法人向けケータリングサービスを開始しました。
 さらに今後は、幼稚園・保育園調理員向けの調理講習会、食品メーカーや原料がありながら活用方法がわからない事業者への商品開発・メニュー開発、また食をツールとしたタイアップイベントなどを一つずつ形にしていきたいと思います。
 食の総合プロデューサーとして五感、時間、空間を演出し、笑顔と記憶に残るストーリー、美味しさと至福の体験をすべての人に提供できる会社を目指していきます。


インタビューを終えて

 起業は社会状況が悪くなると増える傾向がある中、会社生活に満足している時に、それを捨てて起業するのはかなり勇気がいります。その一歩を踏み出した勇気には、正直恐れ入いりました。
 一般的に起業の基本はマーケットイン(お客様のニーズ重視)になりますが、『うちchef』は、個々のライフスタイルに寄り添った食のサービスを届けるというお客様向けのニーズと、やりがいと正当な報酬を得るという料理人向けのニーズの両方を満たそうとする点に事業の思いを感じました。
 代表取締役の比家ゆかりさんは、会社時代に培った食のノウハウとネットワークをお持ちでおり、起業してさらにそれらに拍車をかけています。衣食住は生活の基本であり、食のニーズはなくなることはなく、きっと、未来の食卓を変革する食の総合プロデューサーになってくれるでしょう。

 

(インタビュアー 西條)
 

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