VOL.33
決断力で経営危機から拡大へ!
マラマ合同会社 荒井ゆいさん
・事業所名:マラマ合同会社
・創立年月:2019年4月
・URL:https://www.malamajapan.com/
・事業内容:薬膳商品の企画販売、マルシェ向けサービスの提供及び運営
起業のきっかけ
2013年カナダトロントにおいて、飲食店のマネージャーとして働いている時に、オーナーマネージャーとしてのお話をいただき、2年間、海外で働く方の人材育成とマネージャーの仕事に力を注いできました。その後、出産などもあり、2015年に日本に帰国しました。
日本に戻り何か事業をしてみたいという漠然とした気持ちがあり、以前より興味があった民泊事業に着目。2016年に大田区蒲田にて民泊(ハチコウハウス)をオープンし、それが私の起業の始まりでした。
経営危機の到来
翌2017年には、品川区大井町に2店舗目をオープン。当時は東京オリンピックも迫っていたので満室状態でした。しかし、あの新型コロナウイルス感染症が日本に襲ってきました。東京オリンピックは延期になり、オリンピック需要で埋まっていた客室はすべてキャンセル。インバウンド需要もなくなり、一転して経営危機に陥りました。
しかし、不運はそれだけではありません。いっしょにビジネスをしていた外国人ビジネスパートナーが事業資金を持ち逃げしていたことが発覚!7~8年いっしょにビジネスをしてきたので信頼を置いていましたが、信頼していたがゆえ、任せ過ぎてしまったとことが悪かったと思います。弁護士に相談し裁判も検討しましたが、すでに外国に帰ってしまい、弁護士費用や時間を考えると追いかけて裁判を起こしても採算が合わず断念しました。
その時は、ビジネスパートナーへの恨みもあってやる気も出なかったのですが、キャンセル料に関しては助成金が出たのは不幸中の幸いでした。その後、民泊をどうするかを考えましたが、いつ収まるかわからないコロナ禍の中、家賃などの固定費支出を考えると止めた方が良いと思い、民泊事業からの撤退を選びました。
マイナスからの再スタート
民泊事業を行っていた時と同時期に長女を出産し、その時、体調不良が続きました。それを心配してくれた外国人ライターの友人から、薬膳スープをいただきました。薬膳というと、まずい、苦い、意識が高いというイメージがあったのですが、その薬膳スープはとても美味しく、周りの人たちに分けてもとても好評で、その薬膳の効果もあって、みるみる体調は良くなっていきました。この経験から東洋医学の勉強を始め、若い人たちに薬膳の素晴らしさを伝えたいと思い、民泊事業撤退後、2019年4月にマラマ合同会社を設立し、改めて起業家の道を選びました。
新たな事業を始めるにあたっても、民泊事業の負債は残っており、マイナスからの再スタートになりました。以前はビジネスパートナーに会計、ホームページの更新、SNSの情報発信などを任せ過ぎていたため、いざ1人で事業を始めようと思うと、自分自身では何もできないことに気づきました。その反省から、ホームページ制作からSNSの活用などを自力でできるように、ダブルエスワールドの大西澄江さんから指導を受けました。また、クラウドファンディングにも挑戦し、再スタートの資金調達にも成功しました。
武蔵小山創業支援センターとの出会い
その大西澄江さんが、品川区のウーマンズビジネスグランプリのファイナリストとして出場することになり、私も観覧者として参加しました。その時に大西さんから「本気で起業をするなら、武蔵小山創業支援センターがおすすめよ」と言われ、それが武蔵小山創業支援センターとの出会いになりました。
まずテストマーケティングイベント「羽ばたけ!アントレーヌ」に申し込みましたが、新型コロナの影響でイベントは中止に。しかし、この時のご縁がきっかけとなり、リニューアルオープンしたチャレンジショップに半年入居することができました。以前から接客は好きでしたが、金銭のやり取りや管理、商品の陳列、チラシづくりなどは勉強になりました。また、お店でボーっと待っていても何にもならないことも実感しました。
チャレンジショップ卒業後、当時オンラインショップも開設していましたが、オンラインでは当社の商品の良さは伝わらないと思い、マルシェへの出店をほぼ毎日実施しました。マルシェでは、直接商品を購入される他に、マルシェで商品を見たお客様がオンラインショップで購入されるケースもあり、オンラインショップの売上も拡大しました。
マルシェ文化を広めて
これからに向けて、マルシェコンダクターというビジネスを始めていきます。チャレンジショップ卒業後からマルシェに出店したことで、出店していた生産者の悩みを多く聞くことができ、その悩みを解決できるサービスを始めようと思いました。さらに、品川区大井町にて自身でマルシェも主催していきます。
外国生活が長かったこともあり、友人からも「日本の会社とは合わないと思うよ」と言われていたこともあり、帰国当初から会社勤めは考えていませんでした。実際起業して、自分のペースで仕事も生活もでき、フレンドリィな起業家仲間の増え、起業を選んで良かったと思います。
インタビューを終えて
様々な大きな困難を乗り越えて、ビジネスを拡大していった荒井さん。その要因のひとつは「決断力」と思います。
様々な要因で店舗や事業を止めるか否かを検討する時、頭の中では止めた方が良いと理解していても、そのまま事業を継続してしまい、結果、より大きな赤字を背負ってしまうことがあります。これは「コンコルド効果」または「サンクコスト理論」と呼ばれ、人とは一度始めてしまうと、開店時の苦労や事業への思い入れなどの影響で、止めるという決断ができにくくなることを示します。しかし、荒井さんのケースでは、民泊事業の今後が厳しいと判断するや否や、スパッと民泊事業を撤退し、かつ新たな薬膳事業に転換し現在に至っています。
日本では「継続は力なり」ということわざもり、継続することが美学という風潮もありますが、「三十六計逃げるに如かず」ということわざもあり、状況が悪い場合は一度撤退して立て直す決断をすることも、重要な経営戦略でしょう。
(インタビュアー 西條)