VOL.28

 圧倒的な行動力で、チャンスをゲット!
 HOLUDONA株式会社 代表取締役 和田美香さん

 ・事業所名:HOLUDONA株式会社
 ・創立年月:2015年4月
 ・URL:https://holudona.com/
 ・事業内容:レインコートを収納するポーチなど子供向けアイディア商品等の製造販売

子供の不便が起業のきっかけに

 長男が小学生の時に、雨の日に、レインコートを持っているのに何故か着ないで濡れて帰ってきました。「どうして、レインコートを着ないの?」と聞くと、ランドセルの上から着れないので面倒くさかったと、男の子あるあるな答えが返ってきたのです。夏場ならともかく、冬だと体調を崩すこともあるので、なんとかしようと、ランドセルの上から着ることができるレインコート収納ポーチをつくりました。このレインコート収納ポーチが、発明コンクールで入賞したのです。

 もともと保育士をしていたので、起業するつもりはなかったのですが、レインコート収納ポーチを特許出願していたこともあり、いくつかの企業へ『ライセンス契約しませんか?』と企画書を作りアピールをしました。しかし、なかなか進まず時間だけが経っていき、そうこうしているうちに特許が取れました。子育てもひと段落し、ちょっと自分で作って売ってみようかな、という気持ちが芽生え、これが起業のきっかけになりました

フリーマーケットからグランプリ入賞まで

 最初はママ友にハンドメイドで作ってもらったものを、フリーマーケットで売っていました。するとお客様から「こういうものが欲しかった!」など、良い手応えをつかみました。今でいうテストマーケティングだったのかもしれません。しかしこの時はまだ、起業というよりは、まだ作って売るという軽い気持ちでした。
 ところがある日、テレビから取材を受けました。この取材がきっかけで、国内のレインコートメーカーから製造委託の打診もありました。ハンドメイド製造ですと、自ずと製造できる数に限りがあるので、ここから本格的な起業に心が動いていきました。
 しかし、それまで保育士経験しかなく、このままやってもうまくいかないと思っていた時、私と同じように発明品を商品化している先輩が、「女性のための起業スクールMU★SAKO」を受講、そしてウーマンズビジネスグランプリに挑戦。私もグランプリ本線を見に行きました。これによって、ビジネスの世界を肌で感じることができ、私も「女性のための起業スクールMU★SAKO」に申し込みました。さらにウーマンズビジネスグランプリにも挑戦し、さわやか信金賞を受賞することができました。この時には、他のビジネスプランコンテストでも賞をいただくことができ、起業を続けていく大きな自信になりました。

製造委託で学んだ海外取引の難しさ

 グランプリに進出すると中小企業診断士のサポートがあり、その中小企業診断士から製造委託先や販売先を紹介してもらいました。
 中でも製造委託先だった中国の工場では、何をしてよいかわからず、やりとりが大変でした。通常ですと、仕様書作成、発注、製品チェックという工程を踏むのですが、ものづくりの経験がないので「仕様書ってなに?」というレベルでした。しょうがなく、作りたいものを口頭で伝えて先方の工場で仕様書を作ってもらいましたが、不良品も多かったです。さらに、お願いしていた工場が日本の品質レベルを理解していなく、相手の当たり前とこちらの当たり前が異なり、そのすり合わせが大変でした。しっかり指示したので、次は大丈夫だろうと思ってもやはりダメで、3回ぐらい中国に行き、現地の人と直接コミュニケーションをとりました。
 これらの経験を経たこともあり、今では型をつくり、寸法を測って書類でのやりとりができるようになりました。工場生産は、「指示を伝えて工場に任せれば、お願いした商品ができる」と思っていましたが、その甘さを実感しました。

 

プロスポーツチームとの関係性構築

 お世話になってきた中小企業診断士の方に、生まれ育った町でもあり「弊社がある地域の某プロスポーツチームと仕事がしたい!」と話していたら、なんと、つなげてもらうことができたのです。その後も、話がとんとん拍子で進み、ポンチョとポーチのセットを納品することになりました。紹介してくれた診断士も、本当に契約までつながるとは思っていなかったようです。
 しかし、ここからが大変で、中国工場からの不良品のため納期で迷惑をかけてしまいました。最後は製品2000着を手作業でチェックし、良い製品を納めることができました。そして、大きな取引を行っていく見通しがたったので、これを機に2018年に法人化を果たしました。
 この仕事単体としては、中国工場への視察や製品の作り直しなどを行うなど当初の予定より経費がかかってしまい、利益は少なかったのですが、起こしたばかりの会社だったので、信用面の効果は大きかったと思います。「そんな大手と取引できましたね」と言われることもありますが、ここに至るまでに、ビジネスプランコンテストでの入賞やテレビからの取材などの実績があったことが大きかったと思います。

 

全国の子供に届けたい

 最初はレインコート収納ポーチのみの製造販売だったのですが、中身であるポンチョも作ってほしいという声は多く、またイベントでは、私自身が説明すれば製品を買ってくれますが、ネット販売ではレインコート収納ポーチだけでは難しいということが見えてきたこともあり、ポンチョの開発に着手しました。
 ポンチョ開発にあたり、弊社のママスタッフやインターネットにて200人を超える一般のママ達からアンケートを取りました。すると、雨の日に自転車に乗る時の不便の声がたくさんあり、これをポンチョ開発に活かしました。開発資金調達は、クラウドファンディングを活用しました。すると3日で目標額に達成することができましたが、新型コロナの影響で中国工場がストップしてしまい、4月納品予定の商品が、梅雨明けとなる6月末まで延びてしまいました。支援者の方々にはお詫びの連絡を入れましたが、ありがたい事に多くの方々に状況を理解していただきました。

 弊社の目標は、「全国の子供に届けたい」。起業当初は形にすることに夢中で、資金的なものは頭になく、良いものだったら買ってくれるというキラキラした感じでした。しかし思いだけではなく、売上がないと届けられないということを経営で学びました。これからも元保育士の経験を活かして、子供に関わる商品開発をしていきたいです。さらには、児童養護施設や放課後デイサービス、医療時ケアの団体ととの関わりを増やしていきたいという思いがあります。子どもの環境をサポートする活動を広げ、社会貢献へと繋げられるよう事業を展開していきたいと思っています。

インタビューを終えて

 フリーマーケットから始めて、比較的短期間で海外での製造委託や大手との取引に至った和田美香さん。そのポイントは、「機会をものにする行動力」でしょう。
 例えば、中国工場との製造委託。国が変われば言葉も商慣習も違うので、やはり二の足を踏むことも多いでしょう。大手との取引も、大手との商談経験がないと、その時点で尻込みしてしまう経営者も少なくないです。そしてどちらも失敗すれば、少なからず取り返すことができない埋没コストも発生します。しかし、その不安を物ともせず立ち向かった行動力には脱帽せざるを得ません。
 もちろん、そこに行きつくまでには、たくさんのご苦労もありましたが、その苦労も経験として蓄積されるので、永続経営という点で考えるとプラスに働きます。その行動力があったからこそ、今があると思います。
 起業をすると、自分の知らない世界に飛び込むか否かの判断を迫られる場面は出てきます。その時に、思い切った行動がとれるかどうかも、ビジネスに必要なスキルになるでしょう。

 

(インタビュアー 西條)
 

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