VOL.40
自分の手で香りをつくり、商品として届けられる場所を持ちたい
齊賀千穂子さん
・事業所名:モノコスメラボ(monocosmelab)
・事業設立:2024年1月
・URL:https://www.monocosmelab.com/
・事業内容: 天然精油が香るアロマ雑貨や化粧品の製造販売
天然精油をブレンドしたオリジナルの香りの提案
空間の香りプロデュース
化粧品やアロマ雑貨の企画提案
起業のきっかけ
健康・美容や化粧品自体に興味を持ち、約20年、化粧品やヘルスケア・ビューティーケア商品の企画・開発に携わってきました。転職を重ねたこともあり、食品の品質管理から化粧品メーカー、エステ業界向け商品など、さまざまな販路や価格帯の商品開発を経験するなかで、「自分だったらこうしたい」という理想像ができてきました。
そんななか、「自分の化粧品工房を持ちたい」という思いが湧いてきたことや徐々に化粧品開発の領域が縮小され、サプリメントや温活雑貨など、思い描いていた“本来のものづくり”から遠ざかっていくこと、利益重視で“売れる商品”にシフトし、自分が本当に作りたいものを形にすることは難しいと感じるようになってきたこともあり、「今チャレンジしないと、後々後悔するかもしれない」と思い起業を決意しました 。
MU★SAKOとの出会い
仕事柄もあり、PR TIMESなどで新商品情報や化粧品業界のスタートアップ企業などの情報をチェックするのが好きだったため、武蔵小山創業支援センターの存在は、実はかなり前から知っていました。化粧品のエシカルな取組事例の記事を読んでいたら、偶然、武蔵小山創業支援センターの名前を目にして、“なんだか面白そうな場所だな”と思ったのが最初です。 調べてみたら、女性起業家の体験談が聞けるセミナー「耳よりサロン」があると知り、参加したのがセンターとの“ご縁”スタートとなりました。そのなかで「起業スクールMU★SAKO」の存在も知りました。
参加した「耳よりサロン」ではアクセサリー事業を手がける先輩女性起業家の体験を聞き、とてもパワフルかつ素敵に活動されている姿を見て“私も一歩踏み出してみよう”という気持ちが一気に強まりました。その時に、事務局から「起業スクールMU★SAKO」の案内をもらい、後に届いたメールマガジンに「起業スクールMU★SAKOのエントリーが始まります!」という文字を見た瞬間、迷うことなく即座に申し込んだのを覚えています。
起業スクールMU★SAKOに通って・・・
正直なところ、会社勤めをしながらの受講は大変でした。しかし、講義を重ねるうちに、自分の思いや構想が徐々に「事業計画」という形になっていくことで大きな自信につながりました。 振り返ると、初めて書いた事業計画の数字なんて、今思えば夢物語みたいな数字でした。講義のなかで、“理想”を数値に落とし込んで考える機会があったからこそ、現実を数値に落とし込む力が少しずつ身についた気がしています。そして、何よりも一緒に学んだ仲間の存在が大きかったです。 受講当時は「起業しようか、会社を辞めようか」をちょうど葛藤していた時期でした。そんな迷いも共有できる仲間と出会えたことで、ひとりで悩まずに進むことができました。「起業スクールMU★SAKO」を通じて知り合った同期や先輩とは、今でも相談できる関係が続いており、感謝しています。
起業後に感じた“理想と現実のギャップ”
実は、起業前は「WebサイトやSNSを活用すれば、ある程度商品が認知され、自然と売れていくのでは」と甘く考えていた部分がありました。しかし、実際に起業して事業としてやっていくと、そう甘くはないことを実感しています。サイトを作っただけでは、お客様は来てくれない。実際に“売る”ということの難しさを痛感しました。 長年、ものづくりに携わってきた経験から、商品そのものには自信がありました。しかし、営業や販売という領域ではゼロからの挑戦。武蔵小山創業支援センター1階の期間限定POP UPマーケットやマルシェなどのイベントに出店しても、接客はもちろんですがディスプレイや商品配置など“商品の魅せ方”の工夫が想像以上に必要だと思いました。
■地域とのつながりが広がる きっかけは“飛び込み訪問”から

現在、“間伐材”や“かんなくず”を使ったウッドディフューザーの商品開発をしています。「エコにつながる活動をしたい」という思いもあり、どうやって間伐材やかんなくずを入手するか考え、「品川区商店街連合会へ相談してみよう!」と飛び込み訪問をしたこともありました。担当してくださった方が非常に親身に話を聞いてくださり、地元品川の材木店を紹介してくださったことが、実現への一歩となりました。
また、この出会いが地元品川区の「戸越銀座エリア」とのご縁が深まるきっかけにもなっています。 戸越銀座にある瀬尾商店は、私のお気に入りの雑貨屋さんのひとつであり、以前から通っていました。そんな地元の瀬尾商店さんで商品を扱っていただけたら嬉しいなと思い、営業の連絡を入れたところ、ちょうど香り系のアイテムを扱いたかったとモノコスメラボの商品を取り扱っていただけることになりました。
瀬尾商店は、商店街のブランディングにも力をいれており、戸越銀座商店街で展開している「とごしぎんざブランド」にも関わっておられます。ある時、瀬尾商店の店主さんに「戸越銀座ブランドとコラボしたい」という思いを伝えたところ、快く承諾いただき、「戸越銀座」をテーマに開発したアロマ商品(とごしぎんざの香り)を同店にて販売させていただけることになりました。 営業は初めての経験でしたが、やってみないと始まらないと思い、思い切って動いたことでご縁が次々に広がっていったと感じています。今後も“地域密着型”のスタイルと人とのつながりを大切にしていきながら、モノコスメラボの商品を広めていきたいです。
■清泉女子大学とのコラボレーション

2024年12月に大崎の品川産業支援交流施設(SHIP)で開催された「産学官連携フォーラム」に武蔵小山創業支援センターからお声がけいただき出展しました。その出展がきっかけにとなって、清泉女子大学の安斎教授からお声をいただき、学生の皆さん一緒に「香りプロジェクト」を始動しました。 完成した香りは、清泉女子大学の学生をイメージし、ジャスミンを基調にクラシカルで上品、かつ爽やかな印象の香りに仕上げられました。アロマスプレー「清泉女子大学の香り#01 NATURE」として商品化し、大学のキャンパス内でサンプル展示、モノコスメラボのオンラインショップでも販売しています。
このような“戸越銀座らしさ”や“清泉らしさ”を香りで表現するのは初めての試みでしたが、イメージをカタチにしていく楽しさがありました。
起業スクールMU★SAKO卒業してからセンターとの関わり
開業届は、「起業スクールMU★SAKO」を卒業し、翌年の1月に提出しました。ちょうど同時期に「羽ばたけ★!アントレーヌ(女性のためのテスト出店イベント)」にもお声をかけていただきましたが、起業したばかりでまだ販売できる商品がなかったこともあり断念。この年は、翌年出店者としての参加に向けて経験を積むためにボランティアスタッフとして参加しました。商品が完成してからは、パルム商店街でのトライアルマーケットやMUSAKO HOUSE1階でのPOP UPマーケット、翌年の「羽ばたけ★!アントレーヌ」への出店などを、商品をお客様に届ける場として積極的に活用していきました。 現在は武蔵小山創業支援センターのコワーキングスペースに入居し、活動の拠点としています。コワーキングスペースは、住所登記ができることも大きな魅力でした。また、ものづくりはできませんが、起業仲間とつながったり、相談ができたり、日々刺激を受けられる場所になっています。他の起業家さんとの交流も生まれ、武蔵小山創業支援センター1階チャレンジショップの入居者さんと一緒にワークショップを開催したり、MU★SAKO同期と香るアクセサリーの開発を行ったりと、コラボレーションの輪も広がっています。 2024年から始まったLINEを使ったモニター企画の「LINE de モニター」にも参加しました。モニター参加者からは、商品を使った感想やフィードバックを直接もらうことができる、非常にありがたい機会となりました。 こうやってお話すると、「起業スクールMU★SAKO」に通っているころから、ずっと武蔵小山創業支援センターにはお世話になっています。そのどれもが私にとって心強い存在で、人とのつながりを生み出してくれる場所だと感じています。
■今後の事業展望
今後は、化粧品のカテゴリーを強化していきたいです。まずは、オンラインショップでの売り上げを安定させるため、SEO対策を含めたWebまわりをしっかり整備したいと思っています。それと並行してMUSAKO HOUSEでの経験を活かし、地域での販売活動も引き続き力をいれて、認知度向上や販路拡大していきたいと思っています。先の夢としては、小さくでもいいので石鹸を作る工房を構えたいです。石けんの製造から始まり、精油の蒸留みたいな工場を併設し、アロマオイルも自分のところで作れるといいですね。工房を実現するには、固定費などを考えると葛藤はありますが、「自分で作りたい!」という理想はあきらめません。自分で調合して、この香りとお客様に届けたい!という思いがあるため、それが実現できたら、本当に楽しいだろうなと思っています。起業のきっかけも「自分の工房を持ちたい」という思いでしたので、そこ
が夢なんだと思います。実現へのハードルが見えてきたこともあり、少
しずつ自分のなかでは現実味をおびてきました。
■これから起業を考えている方へ

起業して一番大変だったのは、やはり“売上を作ること”でした。だからといって、起業したことを後悔しているわけではありません。自分で判断して、自分で動けることが一番良かったと思っています。良くも悪くも“自分次第”、それが起業の面白さだなと感じています。やりたい気持ちがあるのなら、まずは一歩踏み出してみることが大事だと思います。失敗したらどうしようという怖さは確かにあります。でも一歩踏み出すことで現状が変わり、自分の行動が変われば周りも変わってきます。 私も実際、「起業スクールMU★SAKO」に通っている間は、退職するかどうかモヤモヤしていました。最後は“起業しない”という選択肢を選ぶ後悔をするより、“やってみよう”という一歩を踏み出したことで、結果的に良いことが現実に起こっていると思っています。 ずっとやりたい気持ちはあったので、ここでの学びが起業への背中を押してくれました。行動に移すには“仲間”や“場所”が私には必要だったと感じています。
インタビューを終えて